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午後に入り、暑さがひどくなってきた。
「そうだ、茶道部をのぞいてみよっか」
草太兄ちゃんがタオルで額の汗を拭きながら、そう提案してきた。
「茶道部?」
「カヤははじめて? おいしいお菓子と抹茶が飲める、って感じかな」
「良いな、いってみたい!」
私は草太兄ちゃんの横に並んで、茶道部の催しているホールをめざした。するとうでに「実行委員会」の腕章を付けている男子生徒が向こうから歩いてくるのとすれ違った。男子生徒は直前までなにか資料を見ていたけれど、私と不意に視線が合った瞬間「花子先輩?」とおどろいた顔を見せた。手に持った資料もバラバラと落ちていく。
「大丈夫ですか?」
「すみません、すみません」
私と草太兄ちゃんは落ちる資料を拾い上げた。受け取る男子生徒は戸惑う視線で私のことを見ている。
「花子先輩は分身の術が使えるんですか?」
「……私は花子さんとは別人です」
私は再び学生証を提示して「花子さん」とは別人である、と証明した。その男子生徒は自分の間違いに気づくと、すぐに「すみません」と謝った。
「ついさっき花子先輩に命令されたばかりなのに、また会うなんて思ってなくて」
「私、そんなに似てます?」
「はい。でも、花子先輩の方が……なんというか、ヤバいですよ」
男子生徒ははにかみながらそれだけ言うと、足早に去っていった。
「カヤがそんな子と似てるのか。兄貴分のオレとしては複雑だなあ」
草太兄ちゃんはそう言いながらまた歩きだした。私はそのうでをつかんで足を止めさせた。
「ねえ、草太兄ちゃん」
「どうかした?」
「私、花子さんに会ってみたい、かも」
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