ドッペルゲンガー

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 草太兄ちゃんは職員室に入って、ものの三分ほどで出てきた。 「分かった、居場所。生徒会室だって」 「生徒会室?」 「なんと、その〈花子さん〉って子、ここの生徒会長なんだって」 「ええっ!」  私は目を剥いた。まさか私のそっくりさんが、生徒会長? 「で、もう午後だから今ごろ生徒会室で、文化祭の会計作業に同行しているだろう、ってさ」 「そうなんだ……意外っていうか、すごい人だったんだね」 「まあ、生徒会長って言っても、うちの学校の場合は雑用係の親玉、ぐらいの認識だけどな。あまり華々しい雰囲気じゃないと思うよ」  草太兄ちゃんはそう言って、私を生徒会室に案内してくれることになった。 「でも、部外者がいきなり入ってきたら困らない?」 「カヤ、忘れてる? これでもオレ、生徒会のOBだよ?」 「そうだったっけ?」  草太兄ちゃんはそう言って私の肩を叩いた。 「そうそう。だから「久しぶりの生徒会室を見学させてください」って言い訳で〈良いわけ〉よ」 「ちょっと、今そういうダジャレにつっこめない」 「カヤ、緊張しすぎ。良いじゃん、別に花子って人とあいさつするぐらい。むしろ、誤解されて怒られてるんだから、謝ってもらわなきゃ」  草太兄ちゃんはそう言うと、私の手をそっとにぎった。 「なんか怖いなって思ったら、すぐに言いな? オレがかばってやるから」 「ありがとう」  草太兄ちゃんの言葉に背中を押されて、私たちは生徒会室へ向かう階段を上った。  最上階、四階の階段脇にある広い一室が生徒会室だった。 「広いね」 「そうだな。でもオレの時代は写真部と半々で使ってたぞ」 「今もそうかな?」 「さあ?」  草太兄ちゃんは久しぶりの生徒会室にワクワクしている表情でドアにノックした。 「どうぞ!」  女の人の声がした。まさかこの声が花子さん?  私は心臓がバクバクと脈打つのが分かった。 「失礼します、ちょっと見学したくて来ました!」  草太兄ちゃんは一気にドアを横に押し開いた。 そこには二人の女子生徒と一人の男子生徒が笑顔で出迎えてくれた。けれど、どの生徒も私に似ているとは思えなかった。  草太兄ちゃんもそう思ったらしい。すぐ「生徒会長はどなたですか?」と尋ねた。  ひとりの女子生徒が笑顔で答える。 「生徒会長は後ろにいますよ」
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