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「ねえ、あなた久里浜高校の生徒なんでしょう?」
私はビクッと跳ねあがった。そっと花子さんの方を向きながら、小さくうなずいた。
「あなたの学生証を見たって生徒から教えてもらったのよ。それより、ウチの高校とそんなに離れてないし、偏差値も違わないけど、なんでウチにこなかったの?」
「それは……」
「それに、そこのお兄さんの出身校でもあるんだし、居心地悪いと思わないけど」
花子さんはうでを組みながら不思議そうに私を見ていた。私も足を止めていろいろ考えるうちに思いだした。
「その、中学の友だちが久里浜高校を志願してて、一緒に通うつもりで、あっちに」
「あ! なるほど。じゃあ、その友だち、落ちたんでしょ」
「……はい、落ちました」
「それで? 久里浜高校、楽しい?」
「…………」
私が答えに窮している間に、花子さんの首からかかっていたスマートフォンが鳴りだした。
「はいはーい。え? 富田先生がまた怒ってる? 今度は私のせいじゃないはず……はいはい、行きますって」
花子さんは「呼び出されたから、行くわ。もし会えたら、またお話しましょ、ドッペルゲンガーさん」と言うと、駆けて行ってしまった。
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