一夜

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一夜

駅のホームで夏のうだるような暑さの中で電車を待っていた。 電車は一時間に一本しかない田舎の駅である。 ふと、足首に痛みがあった。 視線を足にやると、手が足首を掴んでいる。 中年のおっさんのぷよぷよ太った手がある。手首から先はない。 ギリギリと足を掴んでくるので、思わず蹴りあげるようにふり払うと、地面に落ちた手首を踵で思いきっり、ふんずけた。 「あひぃんっ」と野太いおっさんの喘ぎ声が聞こえた。 ぴくぴくと悶える手首に、とどめとばかりに、もう一度踏み潰すと、消えていった。 まあ、幽霊にもMてっいるんですね。 と夏の空を見上げて思った。 そして、店の前で踞る戦前風の浮浪児みたいなのがいて 「親なにしてるんやろ。」と、思って見てたら半分すけてはった。 あと、駅で歩く度に地面に傾けて歩いている女の人がいて、最後は床すれすれに頭がくっついてて、変わった歩き方をするお人やな。と思ったり。 今日はよく幽霊と遭遇するなぁ。と思ったら、家に帰って机の上にお守り忘れて出掛けておった。 お守り、大事。と思った。
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