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42.災⑧
「……うーん」
「眠れないの?」
いろいろと考えすぎた結果眠れない、私は昨夜同様お姉ちゃんの部屋にお泊まりだ。普段あまりないけれど、眠れぬ夜になりそうな予感がしている。
「まぁしょうがないわね。2日も続けて……こんなことになって」
お姉ちゃんの部屋のベッドは、他の部屋の物より少し大きく出来ている。私がいつここで寝てもいいようにーーという大雅くんからの配慮だ。そんな歳じゃないよ!と言い返したけど、修行から戻った後すでに何度かここで寝ている。
ゴロンと寝返りをするとこちらを向いていたお姉ちゃんと目が合った。
「大丈夫よ、お姉ちゃんがいるわ。柚子のことは守ってあげるからね」
そう言って繋がれた手は暖かかった。それでも……頭の中には昨日と今日のことが駆け巡る。ウトウトしてはハッと意識が戻るを繰り返して、外が少しずつ明るくなって来た時、やっと恐怖心が少なくなって眠れた。
朝はいつも通りの時間に起きて、いつも通りの動き。朝食の席では昨日と同じく騎士団の調査があることが告げられ、そこに体調不良で欠席の光くんがいる以外は、昨日見た景色と同じだった。
「門番さぁーん!柚子のお話は門番さんにするように言われたよー」
立花さんから、柚子ちゃんは門番さんに話を聞いて貰ってねと言われたので、その目の前の席に座る。
「あぁ。……とりあえず昨日の確認からだ」
またそれか……。私は昨日の自分の夜の動きを伝え、最後に誰にも言っていなかったことを告げた。
「柚子……犯人っぽい人見た」
「本当か?」
「うん!2人組だったよ!お部屋から、裏門……?勝手口?の方に立ってる人がいたのが見えた。……上から見たから顔も分かんないし、それ以上のことは分かんないけどさ」
「2人組の奴らーー情報としては充分だ。良くやったな」
褒められて少しだけ嬉しくなる。
「誰かに言おうと思ったら、銃?みたいな音が聞こえてその後逃げて行ったみたいなの」
門番さんは丁寧にメモを取っている。
「顔じゃなくても、何か特徴を覚えてるか?……なんでもいい。身長とか、体型とか」
「うーん」
一瞬見ただけだし……と思いながら、再度昨日のことを思い出してみる。
2人組の特徴……。全身黒っぽい服だったような気がするけど、それは夜だったからか。私が見たのはシルエットだけだ。でもその情報が大事なのかもしれない。もう一度よくあの光景を思い返す。
「……2人とも背は同じくらいだったと思う。ちょっと、丸い感じの人とそうでもない人に柚子には見えた!」
「そうか……。あとでお前の部屋から2人組が見えた場所を確認させて貰いたい。出来るか?」
「いいよ!あ……」
役に立てることがあるなら、と意気揚々と返事をしたところで気がついた。
「どうした?」
「柚子の部屋……散らかってるけど大丈夫かなって……」
一応、私も年頃の乙女だ。知り合いの門番さんならまだしも、今お姉ちゃんから聞き取りをしているような年齢の近い人に見られるのは恥ずかしくて、少し小声になってしまった。門番さんは一瞬キョトンとした顔をしたけど、年頃の娘の部屋に同年代の輩は入れないからと言ってくれた。全員の聞き取りが終わり次第、門番さんが私の部屋に来ることになった。お姉ちゃんに許可を取って、片付けをする為に部屋に戻る。……2人組の太ってない方のシルエットーーどこかで見たことがあるような気がする。あれはーー誰かは思い出せないけど、知り合いにいた?それが誰かを思い出すには、もう少し時間がかかるのだった。
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