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『汝、太陽と接触を禁ずる』
古くから脈々と受け継がれてきた、その言葉は月の民と太陽の民を断絶してきた。月の民は月の神ナルを、太陽の民は太陽の神ミナを崇めている。
「一体……どちらの神がそう言ったのかしら」
マキは黄金色に輝く海を見つめ、潮風に髪をたなびかせて呟いた。遥か彼方に太陽の民達の島が臨める高台に、今夜も立っていた。
近くて遠い島、そこに太陽の民達が暮らしている。ほとんど目にすることはないが、朝方漁に出ている太陽の民を見たことがあった。褐色の肌が美しく、マキの心に強烈な羨望となって焼き付いた。月の民は夜しか活動をしない為に肌は青白く、太陽の民ほど健康的とは言えなかった。
マキは昔の言い伝えは迷信だと思っていた。互いに言葉を交わせば理解が深まるし、海や作物の知識を交換し合えるはずだとも考えている。ただ単純にあの美しい男と話したいだけだという本心は出来るだけ隠し、互いの民が豊かに暮らすためには交流が必要だと周りの人々に話していたのだった。
「お喋りするだけでもダメだなんて、長老たちは頭が硬すぎるわ」
独りごちて月を仰ぎ「なぜ関わってはならぬのですか、ナル」と神に問うが返事は決まって潮騒のみだった。
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