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前回の経験から、ここを触れれば冬馬は拒めなくなるだろうと、哲朗は計算していた。
「お前の肌が見たい」
「ここじゃあ……いやだ」
「もう誰も来ないよ」
「でも──バレたら退学になる。そんなのはご免だよ」
哲朗の手が止まった。
「知ってたのか、その話」
「うちのクラスの三条から聞いたよ」冬馬は哲朗の顔を見上げて言った。
「そうか」
哲朗はそっと冬馬の肩を抱くと、
「じゃあ、お前の家に行ってもいいか?」と訊いた。
冬馬は小さく頷いた。
「──今度の土曜の午後なら、いい。誰もいないから」
「わかった」
哲朗はそう答えて、もう一度冬馬に唇を合わせると、ふっくらとした上唇を軽く噛んだ。
冬馬が口を開けると、また舌を絡めとられた。今度は冬馬も自分からそれに応え、舌を絡めてみた。
承諾のキス、のつもりだった……
唇が離れると、冬馬は哲朗の胸に顔を押し当てた。早い鼓動が聞こえる。
胸の高まりがおさまるまで、そうして二人は体を寄せ合ったままにしていた。
──日が傾いてきた。
西側にある窓が夕日で茜色に染まっていた。
「帰ろう」
冬馬がそう促すと、
哲朗は「うん」と言ったあと、何かを思い出すように一瞬黙り、それからこう言った。
「一年のとき、俺も生徒会長に誘われたんだ、この部屋に来いって」
「えっ、」
「でも行かなかった」
哲朗は、小さく微笑んで続けた。
「もう冬馬の事が好きだったから──」
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