3人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
いきなり哲朗は冬馬の上着の間から手を入れて、ワイシャツをめくった。
ひやりとした手の感触に、冬馬は身体を捩った。
「──冷たいよ、哲朗」
「まだ青い痣が残ってる」
哲朗は指でそこをなぞった。
「あ…っ」
「痛い思いさせたよな……」
その手で胴を引き寄せると、哲朗は冬馬を抱き締めていた。
──その時、ドアの開く音がした。
ハッとして服を直そうとした冬馬は、そこへ入ってきた副会長の北山樹と目が合った。
長い前髪の間から、きれいな二重の瞳がこちらを見ていた。
茶色に染めた髪、ツンと尖った鼻、赤い唇。片耳にピアスが揺れた。
決まり悪そうに体を離した二人を、樹は代わる代わる見て、ニヤリと笑うと、
「イチャつくんだったら鍵かけとけよ」
と、意味ありげな言葉を投げた。
「イチャついてなんかないよ──!もう、俺行くから」
冬馬は顔を赤らめて哲朗から離れると、生徒会室から出ていった。
哲朗に急に抱きしめられたこと。それを樹に見られたこと。
その両方で胸の動悸が収まらなかった。
最初のコメントを投稿しよう!