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「私の動きに合わせて、ワン、トゥー、スリー、そうお上手ですよ」
まるで音楽が流れているかのように、天音は正確にリズムを刻んだ。
二人で息を合わせてステップを踏み、天音のたくみなリードに身をまかせているうちに、この恋はやはり運命なのだと、桜子は強く思った。
桜子が見つめると、天音はその視線を受けとめ、柔らかく微笑む。
彼もきっと、同じことを考えているに違いない。
わたくしにはわかる。
二人の心は確かに通い合っている。
もう離れたくない。
このまま、時が止まってしまえばいい。
そう思っていたとき、天音が突然、踊るのをやめて立ち止まった。
「どうなさったの?」
彼は答えず、無言で桜子の手を強く引き、大樹にその背を添わせた。
そして彼女の姿を隠すように目の前に立ち、両脇に手をついた。
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