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レイナは、サジュームの腰に両手を回し、
「あなたのせいではないわ。6歳の子に、何もできはしない」
と、なだめるように言った。
サジュームも、レイナの背中に手を回し、
「そう。本当にそう思えたのは、あなたと暮らしたからなんです」
と、優しく抱き寄せながら言った。
二人は、暗い森に降り注ぐ太陽のスポットライトの中心で、しばらく抱き合っていた。
「以前、こう言ったことを覚えていますか?『あなたと出会ったことで、私の人生は清算された』と」
「え?そういえば、そんなことがあったような…」
記憶に自信なさそうなことを言うレイナを見て、サジュームは微笑んだ。
「あなたは、当時の私に比べものにならないくらい、出来の良い子どもでした。それでも、あなたにこの世界の生きる術を教えていく中で、分かったんです。私の母も、こういう喜びを感じていたんだと」
「喜び?」
「そう。喜びです。他者の人生に関わる喜び、とでも言いましょうか…」
レイナは、見上げてサジュームの次の言葉を待っている。
そんなレイナを見て、サジュームは、ふふっと笑った。
その無垢な瞳が、かつての記憶を呼び覚ます。
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