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女性であるレイナは、自国を離れて、自分の能力を活かして働こうとしたとき、男性を称して生きていくことにした。
なんの後ろ盾のないまま、女性の姿で男の中に身を置くと、さまざまな面倒事が起きるので、それを避けたかった。
「レイ」として働くレイナの毎日は、飛ぶように過ぎていた。
夕方になって従業員たちが店じまいをしているころ、商会の敷地に、ふらりと長身の男が入ってきた。
「やぁ。精が出るね」
会釈してきた従業員のケントに、その男が声をかけた。
「レイナは?」
「向こうで、木こり衆と話をしています」
と、ケントが木材の山の向こうを指さして言った。その男は、勝手知った様子で木材の間をぬって、レイナのいるところに行く。
レイナは、木こり衆の集団と伐採日の打ち合わせをしていた。
そこに長身の男が、ゆらっと現れ、がばっとレイナを抱きしめた。
全員の会話が止まって、微妙な空気が流れる。木こり衆の面々も、毎度のこの光景に慣れてはいるものの、皆、どう反応していいのか困るのだった。
「…サジューム。ちょっと待っていてください」と呆れ顔のレイナ。
「ああ、気にせずに。どうぞ続けて」
皆が居心地悪そうにしているので、レイナは話を切り上げて、サジュームと呼ぶ男性を引っ張ってその場を離れた。
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