3 不穏な気配

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ロキシーとマーキュリーは効率よく対応を行って、ウィルス対策を推進していた。 これほど王立研究学院が能力を持っていたのかと驚くほど、対決と言いつつ連携を取って動いている。 ユリとルイがその能力の高さを思い知ったのは、感染を抑え込む為の速やかな感染隔離を行える采配脳力と治療や後処理に対するカイの判断の速さであった。 また一見弱々しそうに見えるカイは、きわどい決断を躊躇いなく施行できる学者としての矜持がある。 天の川銀河系に属する惑星への対策が、これほど速やかに徹底されたのには帝都システムとビアズリー帝国の協調があればこそだった。 それはウィルス攻撃を仕掛けた者達が脅威として認識するには、十分すぎる材料となったであろう。 状況の好転を見切ったユリは、一旦『帝都』に報告に戻って行った。 その間に、カイ帝王はロキシーとマーキュリーに5大王立研究学院の取りまとめを命じた。 また「空」属性の長はロキシーにアインの代わりの代行を頼んだ。 こうして配置の采配などを見届けると、カイはマーキュリーに自分自身がアンドロメダに赴く決意をした事を伝えたのだった。 もちろん帝王の立場の者がおいそれとその役職を離れる訳にはいかないが、学者であるマーキュリー達はカイの研究者としての欲求も十分過ぎるほど理解できた。 研究者というのは、ガキが大人になったようなもので好奇心が捨てきれないし、そうでなければ一流の研究者とは言えない変人集団だ。 マーキュリーだって、アンドロメダ銀河に行きたいと願わずにはいられない。 また、カイが道を作れば自分達もいずれ行けるのだ。 ルイはアイン博士(傀儡)とファンタジアの医療班主任ジャックと共にすでに出立し、あとでマナブと合流する計画だった。 大勢では目立つ事と、ジャックが医療機材の調達をアンドロメダの惑星『グリーゼ』からしている関係で『桃源郷』を通じて入国しやすいと見越しての事である。 そこでカイはマナブと共に研究目的で、密入国するルートを探るつもりだという。 マーキュリーは目をキラキラと輝かせて反対もせず言ったものだった。 「羨ましいですなぁ…」
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