2王立研究学院

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2王立研究学院

#2-1 学院総長 乳白色の靄がかかる古い建物内に、けたたましい警報ベルが鳴り響く。 「何奴だ!!」 ざわざわと複数人のドタドタとした足音が周囲を囲み、ダミ声の男の声が耳元で(わめ)いているのに気がついて何事かと眠くて重い目を渋々開けた。 「お前らこそ何者だ!!」 「学院の警備隊だ!お前侵入者だな、立て!」 「何だと〜!!誰に物を言っとるんじゃ!!!ワシはここの総長だぞ!!」 「犬族の分際で、こいつ偉そうに!」 引っ立てられそうになったところ、慌てて遠くから駆けつけてくる足音がして警備隊員らは振り返った。 「あ、ルイ総将!」 見目麗しく背も高く緩やかな髪を靡かせながら、長い脚で颯爽と歩く姿はビアズリーの男社会でも一躍憧れの有名人になっていたルイが現れ警備隊員は総礼した。 「申し訳ない。その方は新しく王立研究学院に着任されたアイン総長です。ご迷惑をおかけしました」 「この犬…いや方が、あのアイン博士ですか?し、失礼いたしました!」 「せっかくトイレに行って寝入ったところであったのに、馬鹿者め」 警備員達が去ると、呆れたルイがアインの首を引っ掴んで総長の執務室に連れて行き、別室の寝室に放り投げた。 「何であんな廊下のソファーで寝こけてるんですか!無人の建物部分は、体感センサーがついてるんですから変なところで寝るのはやめてください!まったく世話のやける」 「ふう…世知辛い世の中になったもんじゃて」 もう一眠りするべく布団に潜り込むアインを見届けると、ルイは自分用の学院執務室に向かった。 ビアズリー帝国の惑星を束ねるここ"惑星オーブリー"には立派な王宮があるが、そこよりも少し小高い丘の上にあるこの王立研究学院の方が居心地が良かった。 新帝王カイには兄の時代から仕えるエリート集団がついていて、帝国の日々の機能は安定している。 元々研究職のカイやマナブ達も、この学院の方が居心地が良いようでよくこちらで遭遇する機会が多かった。 ルイは母国の"帝都システム"とは全く異なる、どちらかというと地球人のようなこの血が通っているような教育施設に温もりを感じる。 ホテルなどの経営のノウハウを活かして、研究や後輩の育成も行なっているため早朝の静かな時間帯にはこちらに出向く事が多くなっていた。 またカイの一途な気持ちに完全に応えられない自分の狡さも分かっていて、王宮よりもこちらや地球での仕事を意識的に増やしているようなところもある。 親友のマナブは何も言わないが、お見通しだろう。 「自業自得だ」と言うマナブの声が聞こえてくる気がして、さっさと仕事に取りかかるべく雑念を振り払った。
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