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#2-3 k186
ルイが王宮に戻るとすぐに、地球へ戻る事など到底難しい案件が届けられた。
マナブも深刻な表情を隠さず、駆けつけていた。
"k186という脳炎を起こす新種のウィルスが帝都システムの惑星で蔓延した"という案件に最も相応しく、ふたりが信頼できる人物といえばジェルをおいて他に思い浮かばないが探し出すことは容易で無い。
「しかしこのタイミングでだと、真っ先にビアズリー人が疑われても仕方がないな…ましてや『異能エニグマ』を持つ者には感染しないとなれば」
マナブは論理的思考の持ち主なので、ウィルスを持ち込んだ人物としてビアズリー人との仮説を立てて検証してみる。
「出来過ぎだな。ビアズリー人を陥れるにはもってこいだが、流石に筋書き通りには行かないだろう。とすると、次に狙われるのはビアズリー帝国か…」
「まあ、"帝都"と"ビアズリー帝国"が組む事を望まない輩というのがいるという事だろうなぁ」
ルイも、同調した意見を述べた。
そんな緊張した事態の最中、もっとややこしい事案が持ち込まれた。
ビアズリー帝国の医療班長となったジャックから急いで来てくれという事で、ルイとマナブが呼び出しを受けて駆けつけた治療班のシェルターに見覚えのある人物が横たわっていた。
「リア…だよね。ロバートの妹の」
ルイの問いに、誰からも返事はない。
「どうやってここに連れてきたんだ?」
マナブが、いつもと変わらぬ落ち着いた物言いでジャックに問いかけた。
「帝都からの医療物資の中に紛れ込んでいた。ご丁寧にアラートつきのデータ一式も入っていたよ」
「k186感染者ということか?」
痛みを抱えた物言いで、ルイが確認する。
「なるほどお前さん達は、すでに知っていたと言う事か」
ジャックが不信感を露わにしてふたりを睨みつけたが、すぐに視線を外すと対応指示を仰いだ。
またご丁寧にもここに送られてきた事は他言無用との事で、特にロバート達も知らされていないと記載されていたという。
いずれは知る事になるだろうが、厄介なのはリアの脳にはk186ウィルスが今も存在している状態のためビアズリー帝国にウィルスが持ち込まれた事に他ならない。
しかし脳神経治療の権威マトリの行方不明といいリアの搬送といい、極めて厳重なセキュリティーシステムを持つ"帝都システム"でこのような抜け荷が可能などとは由々しき事態なのだ。
何故セキュリティーを破れるのか?
大きな謎が残ったままだが、とにかく主人を失ったマトリの治療ブースに隠し置くことにした。
三人は事の異様さに、しばし呆然となっていた。
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