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#2-6 水の王立研究学院
立っても座っても鬱陶しいロキシー・モンゴメリーが最初に向かったのは『水』を司る王立研究学院であった。
話しは通してあったが、『帝都』の医療班の班長と言うだけで敵対心バリバリの視線で出迎えられた事は言うまでもない。
だが幸か不幸かそんな視線に気がつくくらいなら、ロキシーが鬱陶しがられる事も無いので彼はいつもの上機嫌だった。
「異能のデータ分析リストでもあれば先ずはそれを見せてもらおうかな」
門外不出の貴重なデータを見せるなどありえないと、騒然とした研究者が飛びかかる既で学院長のマーキュリー・コンラッドが穏やかにきっぱりとお断りを入れた。
「そうですよね。では学院の施設をご案内ください」
ロキシーは鬱陶しいが、捌けたところも大いにあってダメなら次とばかりにさっさとドアを開けて廊下に出て行った。
マーキュリーは苦笑しながらも、ここは私がと怒れる研究者達をなだめつつ嫌な役割をかって出た。
マーキュリーの温厚で慈愛に満ちた性質は、ここ『水』の学院を強くした大きな要因でもある。
ロキシーと並んで歩きながら、矢継ぎ早に繰り出される質問に丁寧に返答するマーキュリー。
ふたりのこうした姿は、気づけば数ヶ月に及んでいた。
心配した者達がマーキュリーへ相手するのも大概にした方が良いと忠告をさしあげても、彼は笑って楽しいですよと答えるばかりだった。
実際マーキュリーはロキシーの見識の深さとその発想が面白く、共に過ごすと研究意欲に油を注いでもらっている愉しさで共同研究をし始めたのも自然な流れであった。
そうしたふたりの様子をカイやルイは逐一報告を受けていたが、マーキュリーをよく知るカイは手放しで喜んでいる。
『水』の学院はカイの母校でもあり、またそこが力をつけるのだ嬉しがるのも理解できるが…カイもそこに行って研究に協力し始めたので結局ルイは仕事をまるっと投げられた状態で痛し痒しの苦笑いとなった。
「どいつもこいつも…」
ため息しか出ないルイに、マナブから
「自業自得」
と地球からメッセージが届けられた。
腹いせに、マナブの苦手な女の子をけしかけて嵌めてやったら流石に奴も根をあげたのか、しばらくルイはマナブから無視される羽目に陥った。
それは意外にもちょっと辛くて、精神的に参っているなと思うルイであった。
※水の王立研究学院
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