サキ

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サキ

 私には親友と呼べる人間がいる。  ……いや、そう自信を持って言えたのは昨日までかも知れない。  私は昨日、ずっと一緒に歩んできた親友・ミキと悶着を起こした。いつものちょっとした(いさか)いというやつではなくて、ここまで本気度の高い喧嘩に発展したのは、初めてだった。  真正面の一軒家に住んでいて、同い年。幼稚園も一緒、当然その後の義務教育だって一緒の学校。今現在の高校だって、二人で相談して選んだ学校に共に通っている。ちょっと運命的ですらある私たち二人。これを親友と呼ばないのは余程の捻くれ者だろう。  引っ込み思案な私を、いつも引っ張ってくれるミキ。いつだって私のことを気にかけてくれるし、優しいだけじゃなくて、 「――サキはどうしたいの!?」  そんな風に優柔不断な私を引っ張ってくれる。  いつも一緒にいる二人。付いた呼び名は『サキミキ』コンビ。  『サキミキ』の主導権は「ミキ」にあると思われがちだけど、私だって全く役に立ってない訳じゃない。勉強は私の方が得意だし、一緒の高校に行くために随分とミキの勉強を手助けをした。受験の期間だけは、何だかいつもと反対の関係で、ちょっと楽しかったのは内緒。  ……そんな親友。私の大切な親友。  だけど、今回ばかりは、私だって引くことが出来なかった。
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