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「こらこら、そんなに大きな声を出したら坊ちゃんが驚かれてしまうよ。ちゃんと診るから落ち着きなさいな」
おっとりとした、どこか気の抜けるような話し方をしたおじいちゃんがそう言って、ポン、と美ショタ君の頭を撫でる。ハッとした美ショタ君を見たおじいちゃんはうんうん、って頷いてそのまま僕の横にある小さな椅子によっこいしょって座ったんだ。
「さて。こんにちは。私はトマス・バーナード。公爵家専属の医者をしている爺だよ。坊ちゃんは昨日まで高熱を出して生死を彷徨っていたんだ。まずは診察をしてもいいかな?」
わざわざ僕と目線を合わせてお話ししてくれたおじいちゃんはお医者さんだった。
高熱で生死を彷徨っていたなんて凄く驚いたけど、機械的に診察することもできるだろうに状況が分かってない僕にちゃんと自己紹介して、診察しなきゃいけない理由も教えてくれるなんて凄くいいおじいちゃんだよね。なんだか嬉しくなっちゃった僕はへにゃりと笑ってコクリと頷いた。
そしたらおじいちゃんも、後ろで様子をうかがっている美ショタ君も何かに驚くように息を飲んで。
その驚き様に、あれ?どうしたんだろう?ってまたコテリ、と首を傾げる。
僕、今何かおかしなことしたかなぁ?
「せんせ?」
さっき美ショタ君が先生って呼んでたし、お医者さんならお名前より先生って呼んだ方が良いだろうって思って呼びかけたら、ハッとしたおじいちゃんがにっこり笑ってくれた。
「お、おぉ、すまないねぇ。じゃあ少し失礼するよ」
そう言ってパパパッと僕を診察してくれたおじいちゃん先生は、うんうん、問題はなさそうだねぇ、って言ってくれた。
よかった。僕、生死を彷徨っていたらしいので。健康が一番だよねぇ。
「さて、体の方は問題なさそうだけどねぇ。病み上がりで申し訳ないが爺の質問に答えてもらえるかねぇ?」
僕もわからない事だらけだから質問されても答えられないかもしれないけど・・・・・・ってちょっと不安に思いながらもまたコクリと頷いた。
「ありがとうねぇ。じゃあまずお名前言えるかねぇ?」
おぅ・・・・・・早速わからない!
「あの・・・、ごめんなさい。僕、お名前分からなくて・・・・・・」
「そぉか、じゃあ坊ちゃんが何歳か分かるかい?」
「えと、ごめんなさい・・・分からない、デス」
「そぉかそぉかぁ。じゃあ何か覚えていることはあるかねぇ?」
覚えている事・・・・・・。日本で大学生だったはずって言ったらなんだかヤバそうなことは今の僕にもわかる。コレは内緒事項だよね、きっと。それ以外に覚えてること・・・うーん。
うんうんと頭を捻っているとおじいちゃん先生がチラリと美ショタ君に視線を向けて。その視線を受けた美ショタ君はペコリと頭を下げてお部屋から出て行ってしまった。どうしたんだろ?
「すまんねぇ、分からなかったら無理して思い出そうとしなくてもいいんだよ。じゃあ今度は爺が坊ちゃんについて知っている事を伝えるから、聞いてみてはくれないかの?」
それは助かるかも。情報も収集出来るし、もしかしたらお話聞いて思い出せるかもしれない!って思ってよろしくお願いしますって座ったままペコって頭を下げた。
にっこり笑ったおじいちゃん先生は、さっき美ショタ君にしてたみたいに頭をポンポンってしてくれて。その優しい手つきが嬉しくて、ニコニコしながらおじいちゃん先生のお話に耳を傾けた。
「坊ちゃんの名前はノア•フローレス君じゃよ。この公爵家の次男で、ちょうど三日前に10歳になったとこじゃな。その三日前の誕生日の日にぼっちゃんは高熱を出してしまって倒れたんじゃ」
こうしゃくけのじなん・・・・・・!公爵なのか侯爵なのかは分からないけど、貴族制度があるってことだよね。薄々気付いてたけど、やっぱりここ、日本じゃない、よねぇ。
そして僕、10歳なのか。そりゃあおててがショタな筈だ。だって僕がショタだったんだもの。
なんてこった!
なんておめめをまんまるにして驚いていたら。
「ノア!」
「私の可愛いノアちゃん・・・!」
バンっと開いたドアから勢いよく悲壮なお顔をした美男美女が飛び込んできたのである。これまた驚きだ。
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