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とっても真っ青なお顔でお部屋に飛び込んできた美男美女さん。その勢いにもびっくりしたけど、それより顔色の悪さの方が気になってしまって。
「あの・・・・・・、だいじょうぶですか?おじいちゃん先生、お二人がお顔が真っ青です。僕よりお二人を診てあげてください」
思わずおじいちゃん先生の袖をくいくい引っ張ってそう言ってしまった。
「け、敬語?お二人!?サミュエルから報告を受けた時はまさかと思ったが・・・・・・ノア、私の事も分からないのかい?」
「そんな・・・・・・!私の可愛いノアちゃんが母様達の事も忘れてしまっただなんて・・・・・・、あぁ・・・・・・っ」
僕の発言で一層顔色が悪くなってしまった美男美女さんが世界の終わりみたいなお顔をして。美女さんがふらりとよろけた。
え、あ、もしかして僕またなんかだめなこと言ったのかも。どうしよう。あの美人さん大丈夫かなぁ・・・・・・。
「アンディ・・・・・・っ!大丈夫か?」
「え、えぇ。申し訳ありません、あなた」
倒れてしまった美女さんをおっと、って抱き止めた男前さんと、男前さんに抱えられるように支えられる涙を浮かべた美人さん。
しょんぼりと眉がさがる僕の頭をポンポンって大きな手が僕の頭を撫でてくれたと思ったら、コホン、っておじいちゃん先生が咳払いをした。
「これこれ、気持ちは分からんでもないがそんなに大騒ぎしなさんな。今一番不安なのは何も分からない坊ちゃんじゃよ」
おじいちゃん先生・・・・・・っ!
僕がおじいちゃん先生の包容力?おじいちゃん力?にウルっとしていると、美男美女さんがハッとして二人で僕のそばにそっとしゃがんで目線を合わせてくれた。
「すまない、ノア。不安にさせてしまったね。私はダニエル・フローレス。ノアの父だ」
「ごめんなさい、ノア。私ったら動揺してしまって・・・。可愛い可愛いノア。私はアンドリュー・フローレス。あなたの母様ですよ。たとえあなたが記憶を失くしてしまっていたとしても、可愛い私の宝物に変わりはないわ」
「そうだ。ノア、私たちの可愛い宝物」
なんということでしょう!美男美女さんは僕の両親だったみたい。そりゃ突然子供が自分たちの事忘れちゃってたら悲しいし動揺しちゃうよね。なのに僕を安心させようと涙を浮かべながらもにっこり笑ってくれて。僕の両親は凄く凄く素敵な人たちみたいだ。
・・・・・・父様と母様の事、ちゃんと思い出したいなぁ。
なんて僕もうるうるしてたんだけど。
ハタと気付いた。
母様、声低くありません?それにお名前、アンドリュー?アンドリューって男性名じゃなかったっけ?
「父様と・・・・・・母様?」
声はハスキーボイスっていう可能性があるにしても、母親が男性名とはこれいかに。思わず疑問形になっちゃった。
「そうだ、父様と母様だ」
「大丈夫よ、これからまたたくさん思い出を作りましょう」
儚げににこにこと笑っている母様はとても綺麗で。女性だと思ってたけどもしかして男性?同性婚的な?え?じゃあ僕を産んだ人は?
なんて内心大混乱な僕。どんどん眉毛がへちゃりとハの字になっていく。
でも二人から手をギュッて握られながら、「可愛いノア、まだ病み上がりなのだからもう少し休んでいなさい」なんて心配そうに言われてしまったらもう何も聞けないよぅ。
そんな僕の様子を見たおじいちゃん先生は、ポンと僕の頭に手を置いて。
「一気にたくさん聞いても混乱するじゃろうから、ゆっくり覚えていったら良いさ」
なんてくしゃりと撫でてくれたんだけど。正直もう混乱してるよ!?大混乱ですよ!?って内心穏やかではなかったけど、三人の心配をしてくれる気持ちが嬉しかったので素直にコクリと頷いた。
続けて両親にもおじいちゃん先生にも横になっておきなさいって言われたので、頭を整理するためにも、とはぁーいって素直にベットに潜り込んだのだった。
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