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「さむくんが、僕のじじゅー?」
僕にまさかの専属侍従が居た。僕、10才だよね?10歳児に専属で侍従ってつくの?なぁんてポカンとしてしまった僕。
「サムとお呼び下さい、ノア様。えぇ、私はノア様の為の侍従ですよ」
「ほわぁ〜・・・・・・。えと、さむ?僕、何も覚えてないから迷惑かけるかもしれないけど、これからよろしくお願いします」
座ったままで申し訳ないけど、そのままペコっと頭を下げたら今度はサムがポカンとしてしまった。なんでぇ?
「ノア様が、お願いを・・・・・・頭まで下げてっ!?」
ズサって効果音がつきそうな感じで後ろに一歩引きながら驚いているサム。僕、お願いしたらダメだった?
「し、失礼いたしましたっ!少々驚いてしまい・・・・・・。本当に記憶が無くなってしまわれたのですね」
しょもん、と下がった眉のままサムを見上げると、慌てたようにサムがこちらに戻ってきて。何だかしみじみとそう言われた。お願いしますって頭下げただけなのにこんなに驚かれるとか、記憶が戻る前の僕ってどんなやつだったんだ……?
「僕、前は悪い子だった?」
うーんって考えてコテリと首を傾げる。
「ノア様は悪い子なんかじゃありませんよ!ノア様の我儘はお可愛らしいので、ノア様の我儘を叶える事が私達の幸せなのです……!なのでやってほしい事や欲しいものがあるのならば遠慮せず、私に命令してくださっていいのですよ!」
なんて両手をグッと握りしめて力説してくるサム。そこはかとなく盲目的な感じがする。気のせいかなぁ?
「僕、さむに命令したくないよ。やってほしい事があったら命令じゃなくてお願いするから、嫌な事があったら教えて?さむが嫌がる事、したくないもん」
一番最初にドアから入ってきた時、凄く大事にしてくれてるんだろうなってすぐわかるような優しい声で僕の具合を聞いてくれたサム。心配して真っ青になっておじいちゃん先生を連れてきてくれたサム。僕の目線に合わせてくれる優しいサム。記憶が無くても、そんな優しいサムの事が僕は既に大好きになっちゃったんだ。だから僕、サムの嫌がることはしたくないよ。
伝わりますようにって、一生懸命そんなような事を話しながらサムのグッと握りしめていた手をギュって両手で握る。
「ノア様……」
そしたらサム、何故か頬を染めて涙ぐんでしまって。
「さむ?どうしたの?どこか痛い?あっ!もしかしておねつ出た?苦しいの?おじいちゃんせんせ、呼ぶ?」
ほっぺたが赤くなって目がウルウルしてるってことは、おねつなのでは?これは大変だっ!おねつさんは寝なきゃいけないんだよっ!って僕、慌ててサムをベッドにグイグイ引っ張り込もうとするんだけど、サム、微動だにしない。僕ってそんなに力ないのかなぁ?ちょこっとへこむ。
「ぐす……っ、取り乱しました。申し訳ありません。私は大丈夫ですよ、お熱ではありませんからね。ただ、ノア様に大好きだと言ってもらえて嬉しくて涙が出そうになってしまっただけなのです。記憶が無くなっていたとしてもサムもノア様が大好きですよ」
サム、お熱じゃなかった。よかった。お熱は苦しくて辛いからね。でもまさか僕に大好きって言われたのが泣いちゃうほど嬉しかったなんて……。
きっと記憶が無くなる前の僕もサムの事が好きだったと思うのに。だってこんなに優しくて格好良くて面倒見がいいんだよ?好きにならないわけがなくない?
って事は、だよ!僕の今までの『好き』がサムに全然伝わってなかったって事だよね。これは大変良くないと思うのです。なので!僕は!これからサムにたくさん大好きって伝えて、大好きって言ってもそんなの知ってるよーってくらいにしないと!
もしかしたら日本での記憶が関係しているのか、『好き』は伝えられるうちに伝えないといけないって、強く思う。まぁ記憶自体は覚えてないんだけどね。
だから余計に、記憶を無くしてから好きだって思ったサムや僕の事をとっても心配してくれた両親やおじいちゃん先生にも、たくさん好きだよって伝えなきゃって思うんだ。
「ありがと、さむ!僕、さむの事たくさん好きだからねっ!」
「ノア様ぁ……っ!」
また涙ぐんでしまったサムの頭をよしよしって撫でたら、サムがなんだか照れていて。それがすごく可愛くて、僕はにっこにこでサムの頭をよしよしするのであった。
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