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「あの、モエさんどうかなさいましたか?」
「いいえ、何でもないです。続けましょうか。唯さんのお母様についてですが、そこまで厳しい制限を強いて、ボランティア活動もされているならば相当の猫好きという印象を、最初は受けましたが、どうやら……」
「そんなわけないでしょう、撮影部屋とかを作ったのもついこの間の話です。だって、もともとは猫が苦手なんですから。犬だって苦手だし……というか、自分以外の人間も、生き物も、見下しているような性格なんです」
「はあ?」
裏返った声を放り出したと同時に、私は身を乗り出す。
「だ、だってお母さんは……ヤスコさんは……」
「動画投稿サイトや、メッセージアプリやコミュニケーションアプリで自分が保護活動をしている優しい人間と、アピールしたいだけなんです。病院に連れて行ってワクチンを打たせるのも、食事を与えるのも、糞尿を掃除するのもぜんぶ、私かもしくは父がやっています。父も言い返せば暴れたり、大きな声で怒鳴り続けるから面倒で、言いなりになっています。情けないです」
あたふたと、私はいつも使っているカーキ色の斜め掛けショルダーバッグからICレコーダーにスマホ、それからメモ書きするために使うノートとボールペンを取り出し、テーブルに並べた。
「唯さん、申し訳ないのですが先ほどおっしゃったこと、もう一度繰り返していただけないでしょうか?」
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