3人が本棚に入れています
本棚に追加
「ええ、もちろん。父だって言いなりになっていますが、うんざりしています。自己顕示欲と自己満足に突き合わされて心底迷惑していますし、家族から見ても母親の行動は不自然で痛々しく、誰も幸せになれない結果しか待ち受けていない気がするんです。だから、出ていく前に……母に、あいつにはちゃんと仕返しして、猫もどうにかしようって、父と決めて、ようやく一人暮らしを応援してくれるようになりました。だって、何より……猫たちがかわいそうじゃないですか。いや、猫が好きなわけじゃないんですけどね」
好きなわけじゃない、とはいわゆる唯さんなりの「ツンデレ」にも見えなくもない。
きっと彼女は、唯さんはひそかに「猫が好き」なんだろう。
だからこそ、捨て身に近い形で私にメールを送ってきたんじゃないか。
「わかりました、では改めてよろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いいたします」
互いに一礼したのちに、スマホのボイスレコーダーと、ICレコーダーを起動させる。
なんだか緊張しちゃう、と唯さんがそっと、照れたようにつぶやいた。
最初のコメントを投稿しよう!