2 ヤスコさん②

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2 ヤスコさん②

 猫が苦手にもかかわらず、ボランティアで保護活動をし続ける。  世話は唯さんと父親にまかせ、自分は「保護猫をかわいがる、優しい女性」というアピールだけをひたすらに行う。  ヤスコさんのひどくわがままで、はげしい自己顕示欲と承認欲求はおさまるどころか、とどまりを知らないと唯さんは疲弊したように言う。 「そういえば唯さん、喫煙されるとメールに書かれていましたが、喫煙席に今からでも変更してもらいますか?」 「いえ、お気遣いなく。一日に五本ぐらいしか吸わないし、我慢しようと思えば一日吸わなくても平気なんです。あと、喫煙席って壁とかテーブルに副流煙のにおいがしみついて、べたべたしているような気がして好きじゃないんですよね。モエさんのブログでは禁煙に成功したって書いてありましたし、私も値上げするからそろそろって、考えているんです」 「いやあ、そんなお恥ずかしい。生活のひとりごとみたいなところまで読んでいただけて、うれしいです」  照れていると、唯さんはようやく「うふふ」と柔らかくふきだして、微笑んだ。 「父はとっくに禁煙したというか……母にさせられたんですよね。駅で隠れて吸っていると臭い臭いって、追い出されたりして。一日中トイレ掃除もしない、食事も与えないでひどい悪臭を放っている家のほうがよほど臭いくせに、変な話ですよ」 「唯さんかもしくはお父様のほうで、お母様の行動について注意したり、怒ったりすることはありましたか?」  何回かは、とあきらめた感じに唯さんは答える。
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