0ココロダケ

2/3
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/173ページ
 ここよりいいところは、そとにはいくらでもあるだろうにって。  オニババはほんもののオニだ、おとついだって、おなじようにうめられた、ばあさんがいただろうって。  みんな、こそこそ、ひそひそとおはなししていたから、ねたふりをして、ずっときいていたの。  だれもむかえにこない、だれもここからだしてくれない。  オニババは、にやにやわらっている。    こねこがいれば、たくさんつれるって。  あとはああだこうだといって、ことわれば、どうにかなるもんだって。  ことばがわからないとおもっている、おろかなもんじゃ。  オニババのこえをきいて、ふわふわしたひげの、おじいさんがいっていた。  あのおじいさんも、ずっとまえに、うめられたらしい。  ぐったりとねころんで、そのままうごかなくなって、つめたくなって、なにもいわなくなってから、オニババがしっぽをつかんで、さかさにしたままつれていっちゃった。  オニババはきらい、だいきらい。  そうだ、またさがしにいかなくちゃ。  おかあさんがおしえてくれた、やりかたで、さがしにいかなくちゃ。  やさしいひとが、いるところ。  おいしいごはんが、あるところ。  おそとをながめたり、あるいたり、とびはねたりすることができるおうち。  もう、おてても、あんよも、ふらふらしていてうごけないわ。  きたないオリも、オニババも、みんなみんな、いやなのに、どこにもにげることができないなんて、かなしい、かなしい。  でも、でもねおかあさん。  わたし、じょうずにできるようになったんだよ。  こころだけを、そとにだして、すきにうごけるようになれたんだよ。  まっていてね、みんな。  わたしね、ぜったいぜったい、ここからでていくんだ。  
/173ページ

最初のコメントを投稿しよう!