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小柄で全体的に金魚や子犬を思わせる、めりはりあるグラマラスなスタイルと大きな目に、くるりとカールされたまつげと赤いリップがよく似合っている。
芯も強いし、気も強そうだなという第一印象を抱きながらまずは世間話をしてから本題に入ると「猫はあまり好きじゃないけれど、母親は大嫌いです」という発言を、眉間にしわをよせて、ダイレクトに表情へあらわしながら答えられてしまった。
「すいません、いきなりこんなあからさまに……」
「いいえ、お気になさらず。きっと諸事情がおありでしょうから、こちらまでメールを送ってくださったんですよね?」
そうです、と唯さんはうなずくと注文した瀬戸内レモネードをひとくち飲んだ。
「今はこんな感じでメイクしていますけれど、アイカラーやマスカラ、リップとかは会社のデスクに保管して、家ではベースとアイブロウしかひかないんです。だって、家に入る前にデパートの化粧室で全部落とさないと入れないし。もう早く引っ越したくてたまりません」
「それは……どういう、ことなんですか?」
唯さんはジャケットを脱ぎ、インナーに着ていたうすいグレーの、ボートネックカットソー一枚になると「いや、神経質というか、ばからしいというか……」などとぼそぼそ濁しながら切り出した。
「モエさんだって、客観的に見てもおかしいと感じるはずです。当たり前のことに目くじらを立てて怒られ、家じゅうを追いかけまわされ、ぎゃあぎゃあ騒がれるんですから」
「家族の誰かが、ということですね?」
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