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私達の世界には、ある伝説があった。
この世界を治める神様と、その神様に仕える十二支――つまり十二匹の神獣の伝説である。
遠い遠い昔。真っ暗な闇の中に降り立った神様は、世界に光を齎し、海を作り、陸を作り、生命を作った。しかし、世界はあまりにも広く、とても神様一人だけの力で全てを管理することは叶わない。
そこで、十二の陸地を作り、その一つ一つを治める神獣を遣わせたという。それが十二支と呼ばれる獣たち。子、丑、虎、卯、辰、巳、馬、羊、猿、鳥、犬、猪。彼らは偉大なる神様の使徒としてそれぞれの土地で崇められ、人々は神獣の指揮に従って土地を治めることで繁栄を極めていったのだそうだ。
長い月日の後、様々な天変地異や戦争があり――十二に別れていた大陸は、現在は四つ程度の数と多数の島国に分かれたが。今でも、それぞれの土地には神獣信仰が根強く残っているという。そして、一定周期で神獣たちが人間の世界に降り立ち、人々に繁栄を齎し、あるいは偉大なる教えを授けてくれるとされているのだ。
これが、世界創生の物語。絵本にもなっていて、幼い頃からこの話を読み聞かせられて育つ子供は少なくない。
私、柊花音もその一人だった。双子の姉、柊紫音と共に、両親や村の人々に伝説を聞かされて育ってきたのである。最も、私達がその話をしつこく聞かされていたのには、他の子供達とは違う特別な理由もあったわけだが。
「花音ちゃんと紫音ちゃんは、本当に可愛らしく育って。しかもよく似ておりますわ。黙っていたら、どっちがどっちかわからないくらい」
柊家の遠縁にあたるおばあちゃんは、紫音の髪を綺麗に結い上げながら言った。私達がまだ八歳くらいの頃の話である。
綺麗に結い上げた髪に、蒼い蝶々のかんざしを挿す。それが、柊家の女の子の正装だった。ところが、この髪型をするのもかんざしをするのも大抵紫音一人だけである。紫音よりずっと活発でお転婆だった私は、すぐに髪の毛がほどけてしまうし、あっという間にかんざしを落としてなくしてしまうことが少なくなかったからだ。
最初はもう少し落ち着きを持てと私に教えていた両親も次第に諦めて、近年は私だけ髪を降ろしたまま歩いていることも少なくなかった。
「そんなに、私とお姉ちゃんって似てるう?」
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