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そして今のぼくらは!
「洋ちゃんがいないから、ずっと休んでた。早乙女が何度もうちに来たけど、夜の七時なんか家にいるワケない」
学校に向かう道すがら。冴月はそう言って笑った。ぼくは何も言わず黙っていた。学校なんか来なくていいから、早くどこかへ遊びにでも行ってほしいという気分だった。
一緒にいるところに、警察の人が来て事情聴取され、ぼくも関係者のように思われたり、野田先生に冴月のことで呼び出されて長い時間、冴月との関係を聞かれたりとろくなことがなかった。
「でも今日は特別!洋ちゃんが学校に行くんだから!」
そう言うと冴月は、僕の腕をつかんだ。横を通り過ぎるうちの学校の生徒たちが、横目でこっそり見て、ひそひそなにか話していく。ぼくは恥ずかしいし、自分の立場が一層悪くなることを考えると、心が憂鬱になってきた。
「なんてたって洋ちゃんはね。わたしの婚約者なんだから!」
ほかの生徒が足早にぼくらの横を通り過ぎていった。何で、そんな大声出すんだろう。
ぼくは冴月とはできるだけ離れて歩きたかった。
だけど彼女と一緒に歩きたい人間って本当に大勢いるみたいだ。
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