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マッドキャットの黒幕
遠山くんはいろいろと教えてくれた。
ぼくを隠し撮りした写真が、ヤンキーの間で出回り、会員制の闇サイトにまで紹介され、
<こいつがマッドキャットの黒幕だ。関わると死ぬから、ひとりでいても絶対、近づくな。美人の女子高校生といたら、そいつがマッドキャットだ。わざと弱そうな様子で道を歩き、獲物が近づいたら、すぐにマッドキャットを呼び出して暴力で金品を巻きあげている。なおこのサイトを書いたのは、中部高校二年四組、吹奏楽部の堀田信三だ(たぶん、真の作成者が、キライな人間の名前を書いたんだと思う)>
と、まったく身に覚えのないキャプションがついていたという。
「じょ、冗談じゃない」
ぼくは恐怖に震えた。フェイクだ。名誉毀損案件だ!
それよりもっと恐ろしいことがある。
「隠し撮りされた写真まで出回ったら、冴月を倒したい奴に人質にされるかもしれない。ぼくはどうなるんだ」
ぼくの声は恐怖に震えていた。
何でこんなことばっかり起きるんだ。ぼくは立派な人間とは思わない。けれどひとりではゲームセンターにも行かないのに……。
「松山」
遠山くんが心配そうな目でぼくを見た。だが目の奥にハッキリと満面の笑みを見た。やっぱり彼は友だちなんかじゃない。
「彼氏だから知らないんだな。いいか。冴月は『マッドキャット』と呼ばれて、半グレどころか、暴力団にまで知られてんだ。みんな関わりあいを恐れてる。冴月を倒したいなんて自殺行為だ」
遠山くんの話すところでは、本来なら冴月の隠し撮り写真を回し、
「こいつに絶対関わるな。死ぬ!」
と説明するのが一番なんだけど、隠し撮りする勇気のある人間は、ひとりもいなかったということだ。
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