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婚約者がもうひとり?
久しぶりに学校に向かう朝。昨夜、帰りが遅かったから、ずっとまだ睡眠モードだった。
突然自転車のチャイムの音がけたたましく鳴った。ぼくの目前で急ブレーキをかける。
ぼくは一瞬で起床モードに切り替わった。
「おっはよう!」
頭にガンガンひびく大声がした。
髪を金髪に染めたショートカットの女子高校生が自転車にまたがっている。
ぼくと同じく、紺のブレザーの制服。
真っ赤な口紅が色鮮やかだった。いつも下着と太腿がハッキリ見えるくらいの短いミニスカートをはいているから目のやり場に困った。
どれも校則違反なんですけど……
「大変だったよね」
同級生の相羽冴月が、そう言いながら自転車を下りた。ぼくと肩を並べて歩き出す。
これだけはハッキリと言える。
冴月は確かに美人だ!
ブレザーとブラウスの制服が少し合わなくなったのか、美しい曲線を描くMカップが強調されている。
思いっきり短くしたミニスカートのすそからのぞく長い脚は、雪のように完璧な白さでなめらかな曲線を描いている。太腿が見るからに柔らかそうで、甘ったるいケーキを目野村萬斎前にしている気分になる。黒のハイソックスが白い脚の雪のような白さを一層強調し、男子はみな、冴月の脚を見たら、永遠に目が離せなくなる。
そうやって蜘蛛の糸にからみとられ、
「セクハラってどう解決するか知ってるか。金だすんだよ、金」
と脅され、一ケ月分の小遣いを失った生徒が何十人といると聞いた。
顔立ちだって少しつりあがった大きな目がキラキラ輝いているのが妖しくセクシーだった。
だけどね。性格悪そうなのが、顔によく表れてて、とっても損してると思う。
「ねっ、後ろ乗ってよ」
冴月が甘ったるい声で話しかけてくる。
「ダメだよ、そんなの」
ぼくは首を横に振った。
「相羽さん、自転車通学、申請してないじゃない。完全に校則違反になるよ」
「学校の前で下りるから通学じゃないよ」
そうすました顔で言ってたけど、ぼくが乗らないので、自転車を押して歩き始めた。
「でも申請あげてないの、よく知ってたね」
冴月が嬉しそうに言うのを聞いて、悪い予感がした。
「やっぱりわたしの婚約者だ」
そう強引に結論した。ぜんぜんプロセスがおかしい。
よけいなこと言わなければよかったと、今さらながら自分自身の愚かさを心の中で嘆いた。
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