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 そのうち、水底の影が自分を見つめているように感じた。水底から呼ばれている。もし、そこに行けばどうなるだろう。息ができなくなるのは苦しいだろうか。地上にいるより、つらいだろうか。  つらい、つらいよ。熱いものがこみあげてきて、慎也の視界が滲んだ。イジメられていることを認めたくなくて、平気なフリをしていた。つらいことに気づかなかった。もうこんな生活はイヤだ。ぼくの言葉をまともに聞いてもらえないのはイヤだ。豚扱いされているのに、媚びて笑うのもイヤだ。  慎也はプールサイドにしゃがみこみ、泣いた。  翌日から慎也はダイエットを始めた。毎日のお菓子をやめ、ご飯の量を減らして、腹筋やジョギングをした。初めはきつくて続かなかった。自分の意志の弱さに負けないように、親に頼んでトレーニングジムに通わせてもらった。  そして猛勉強して私立の進学校に合格した。中学からの進学者は慎也以外いない。受験勉強の間もダイエットとトレーニングを続け、ちょうど成長期に入ったこともあり、入学式には長身の引き締まった体になっていた。  高校では彼は笑われなかった。誰にもバカにされない場所って、こんなに素晴らしいものなのか。  自宅近くのコンビニで中学の同級生をみかけると、自分から遠ざかった。俺はもう奴らとは違う世界にいるんだ。一流大学への進学を目指す世界で俺はがんばる。がんばれば上の世界に行ける。俺はもっともっと上に昇って、お前らを見返してやる。  高校一年生の時、三年生の女子から告白されて交際を始めた。初めてのデート、手をつなぐ。初めは何もかもがぎこちなくて、先輩にリードされていて、自分が見下されているんじゃないかと思って勉強した。彼女にイケてないと見られたくない。だんだんリードできるようになる。嬉しかった。
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