幼なじみと青い春② 〜ずっと側に〜

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「圭くんと離れるのが寂しい」 「なっ……にをっ……」 いきなり何を言い出すのか。動揺した圭一は一歩後退る。圭一とて美月と離れるのはあまりいい気はしない。けれど進路は将来を決める大切な分岐点。そこを美月と合わせるだとか美月に合わせてもらうのは違う気がする。 「だってぇ。私は圭くんがいないと何もできないって知ってるくせに」 「……それは、そうだな」 「だから大学行っても私の面倒見てね」 「……」 コテンと首を傾げておねだりをする美月。彼女はそれがあざとい行為だとわかっているのだろうか。いや、美月があざといわけがない。美月の態度に計算なんか含まれるわけがない。それがいつもの美月の自然体なのだから。 「美月は俺のことどう思ってるわけ?」 「へっ?」 まさかそんなことを聞かれるとは思わず、美月の目は泳ぐ。幼い頃から一緒にいる圭一は幼なじみで仲良しで頼りになって……。 「便利だなーとか思って――」 「違うよっ!」 圭一の言葉に美月はすぐさま否定する。そんなんじゃない、美月が圭一を頼るのは、そんな理由じゃないのだ。 美月は圭一のシャツの袖をぎゅっと握った。 「私は圭くんのことが……好きだから」 言うつもりなんてなかった。だけど圭一をいいように使っているとも思われたくなかった。ただ、彼の優しさに甘えていただけなのだ。 「……熱、上がったんじゃないのか?」 圭一は美月のおでこに手を当てる。 ほどよくひんやりとしていて気持ちがいい。 圭一は美月の手をそっとシャツから剥がす。 ああ、フラれた、と思った。 美月が圭一を好きだと口を滑らせてしまったから、この関係は終わりになる。きっと圭一は呆れてしまったに違いない。
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