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「……大学だけでいいの?」
「えっ?」
言われた意味がわからなくて、俯いていた美月は思わず顔を上げた。
「だから、美月の面倒見るの、大学だけでいいのかよって聞いてる」
少々ぶっきらぼうな物言いだが、なぜだか圭一の耳は真っ赤になっていて、美月は幻でも見ているのかと思った。
「……じゃあ、一生でもいい?」
「いいよ」
「ほんと?」
「ああ」
「私、ずっと圭くんの側にいていいの?」
「だから、いいって言って――うわっ」
突然美月が飛びついてきたので圭一はバランスを崩してよろける。それでもぎゅうっとしがみついてくる幼なじみの頭に恐る恐るそっと触れた。ずっと側にいたのにこんな風に触るのは初めてだった。
熱があるからか、美月の体は熱い。でもそれ以上に圭一の体も熱くなっている気がする。
「……美月、とりあえず早く風邪治せ」
「もう治った」
「嘘つけ」
「圭くんがいてくれたら治るもん。圭くんは私のお薬なの」
「また意味のわからんことを……」
やれやれと圭一は美月を布団に戻す。大人しく布団に入った美月はえへへと笑った。
「……何だよ?」
「えへへ、なーんでもない。圭くん好き」
このときの、圭一の面食らったような顔を、美月は一生忘れないと思った。
顔を赤らめた圭一がぷいっと横を向く。
「圭くん、お腹空いた」
「……はいはい、わかったよ」
圭一は乱暴に、いや照れ隠しなのか、美月の頭をわしゃわしゃと撫でた。それすらも美月は嬉しいと感じる。圭一は美月を好きだとは言わないけれど、彼の気持ちは十分に伝わってくる。
「美月」
「なあにぃ~?」
「俺も好きだよ」
美月の面食らったような顔を、圭一は一生忘れないと思った。
【END】
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