幼なじみと青い春② 〜ずっと側に〜

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雑誌の付録だったパンのキャラクターのレジャーシートを敷いて、その上に保育園児の美月が座る。首には人形用の聴診器をかけ、手にはこれまた人形用の注射器。 「みつきはおいしゃさんで~、けーくんはかんじゃさんね! はいっ、いらっしゃいませー!」 「みつきちゃん、びょういんはいらっしゃいませっていわないよ?」 「いいのー。はやくすわってー」 美月は圭一に命令し、圭一はすごすごと従う。 家がすぐ近くの二人は幼なじみ。一歳の頃から同じ保育園に通う仲良しだ。 「きょうはどうしましたかー?」 「えっとー、おなかがいたいです」 「わかりました。ではしらべますね」 美月はおもちゃの聴診器で圭一のお腹をぽんぽんする。 「おねつもはかりましょう。あっ、ねつありますねー。おくすりだしまーす」 美月は『くすり』と書かれた紙切れを圭一に渡した。 「はいっ、おだいじにー」 「ありがとうございます」 いつも同じパターンのお医者さんごっこ。美月が毎回お医者さんで、圭一は患者さんだ。 「みつきねぇ、おいしゃさんになるんだー」 「えー、いいなぁ。ぼくもおいしゃさんになりたい」 「じゃあ、いっしょにおいしゃさんになろっか」 全然覚えていない幼い頃の記憶の中で、唯一残っているもの。高校三年生の圭一はふと思い出していた。
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