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私が義母にそう言った翌日に義母が家を出た。だから義父と夫は私が義母を追い出したと言うのだ。
くだらない言いがかりだと思うけれど2対1で勝てるはずもなく、ただ私は今の最低限の自分の生活が確実なことで、こうして母のところに来て一緒に過ごせると感謝しなきゃ…そう自分に言い聞かせて、夫や義父にちょこっと言い返しつつも折れて、折れて…毎日を過ごしている。
まだ静かに眠る母の洗濯物を持って洗濯に行くと、窓際の洗濯乾燥機を回してから窓の外を眺める。母の部屋からは小さな中庭が見え、ここからは敷地に面した道路がイチョウの樹の向こうに見える。
今年はあのイチョウの美しい頃…母はどうしているだろうか。去年はあそこまで一緒に歩いて散歩出来たけれど…今年は車椅子かな…夏まではもたないと言われていた母が8月後半の今、それを乗り越えたと思うと欲が出る。
道路からホスピスの敷地内へ大きな黒い車が入って来るのが見えて、昨日の藤堂さんの車を思い出した。打ち身は痛むけれど日にち薬だ。擦り傷は見えないように白い長袖ブラウスを着て来た。母には見えないように…
部屋に戻っても母はまだ穏やかに眠っている。痛みもなく眠れるなら今日はいい日だね。そう思いながら、午後のこの時間になると夕食に何を作るかと考えるのは習慣になっているなぁと一人で苦笑する。
お義父さんはお義母さんを迎えに行けばいいのに…そうすれば私は夫と二人分の食事の準備で済む。でも何故か義父は義母を迎えに行かない。実家にいると分かっているのに迎えに行かず、普通に出勤して朝夕の食事を当たり前に私と夫と一緒に食べる。
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