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part 1
「紗栄子」
ヒュッ…いやらしい声に呼吸が止まりそうになる。振り向かないままの私の背後から
「こんな時間にどこへ行く?」
と聞こえたけれど、私は玄関へ向かった。
「逃げるのかっ?」
「…逃げる?ちょっとウォーキングです。それとも…逃げられるような心当たりでもあります、お義父さん?」
チラッと振り向くと、お風呂上がりのトランクス姿の義父と目が合う。声だけでなく、いやらしい目つき…
「偉そうになったな」
「おかげさまで強くはなりました。いってきます」
「待てっ…耕介ーっ。紗栄子が逃げるぞ、バイクのキー持って来いっ」
義父にはどうしても私が逃げるように見えるようで、全力で息子を呼ぶ。当然ながら、義父の息子は私の夫。
この家の住人は清水耕介と紗栄子、そして清水勇の3人だ。
義母は2ヵ月前に出て行った。夫と義父曰く
「紗栄子のせいで出て行った」
らしい。そこから息の詰まる生活が悪化、助長され、私はたまにフラッと一人になるために出掛ける。
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