part 1

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聞き出すだけでなく申し出も添える藤堂さんは、交渉術にも長けているのかもしれない。それでも私は話すつもりはない。 「大丈夫です。自分で帰れます」 「このあと痛みが出るかもしれないので、それはヤメて下さい」 「舞生の言う通りです、清水さん。迎えがなければ私どもが送ります」 福嶋兄弟も慌てる様子もなく、順に私へと口を開く。名前も言うなと言われたのに、家を知られるなど以ての外だろう。 「本当に大丈夫ですから」 「事故る相手を選べ、は無理な話だと言ったな?」 「……」 「電話の主は事故だけでなく相手…つまり俺たちを知って大声で騒いでいた…アンタとはかなり違う温度でな」 「若、アンタは清水さんに失礼です」 「悪い。紗栄子…だな」 福嶋さんは藤堂さんを若って呼ぶんだ。この人たちは私に何も隠そうとしていないように見える。 「若が車を降りた時点で、若のことを知っている人がいたでしょうから」 やっぱり福嶋弟さんも若と呼んで隠すつもりはないんだ。 「…名前も言うなと電話で言われましたけど、もう言ってしまったものは仕方ないので…この場のことも知らせずに自分で帰ります」
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