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「失礼ですが、お電話はご家族からでしたか?」
薄い色のサングラスというのか色付きレンズ眼鏡というのか、極薄いグレーかサックスブルーがかったように見えるレンズの入った眼鏡を掛けた福嶋さんは丁寧な口調ながら、真っ直ぐに私を見る。昔、おばあちゃんが
「この人のサングラスを見ると赤い指輪が欲しくなる」
と言って見せてくれた歌手か俳優さんに似ている顔立ちだろうか。
「はい」
「その方が藤堂に名前を言うな、と?」
「…はい…言ったあとなのでいいです」
「そうですね、もう伺いました。特に悪用する理由もありませんのでご心配なく」
悪用する理由があれば悪用するのか…
「ただ、診察や治療が必要な場合に備えて連絡先を教えて頂けますか?」
「名前を言うなと言われたのに、それ以上は言いません。請求しないのでご心配なく」
反対にご心配なくと返した私に
「どうしてそこまでなんでしょうね?名前も言うなって…別に名前を知ったってどうにもしませんけどね。ご家族はうちで金でも借りてるんですかね?」
福嶋さんと似ていない面長イケメンの弟さんが聞いてくる。
「そんなことはないです」
お金には困っていないと言い切れる。夫も義父もお金には困っていない。
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