part 1

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そこには ‘株式会社ロータスハウジング&プランニング’ という社名と福嶋さんの名前、会社の代表電話番号とファックス番号、メールアドレス、そして携帯電話の番号が印字されていた。エレベーターが止まると、福嶋さんは役職名のないシンプルな名刺を、さらにぐっと私に差し出すのでとりあえず受け取る。 そしてエントランスを出ると、待っていたタクシーの運転手さんに福嶋さんが1万円を渡して 「よろしくお願いします」 と腰を折り、私に 「名前は言っていないとご家族に伝えて頂いて問題ありませんので。では、失礼します」 と言ってすぐに建物へと戻って行った。 「乗って下さい。どちらまで?」 運転手さんに促されてタクシーへ乗り込むと、自宅の住所を告げる。はぁ…想定外の散歩になってしまった…自宅で夫に何と言われるのだろうか? 帰ってみると、電話での勢いから恐れていたような言葉を浴びせられるよりは、夫も義父も私が素性を明かしていないかを気にしている。 「名前は言っていないけど…一般人の名前を知ったからってそんなに問題ある?名前を知ったって関わることがないでしょ?」
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