part 1

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私がそう聞くと 「まあまあ、ケガがそんなので良かった。驚かさないでくれよ」 と甚平パジャマ姿の義父はリビングを出て自室へ眠りに行く。夫は 「知られていない方が安心じゃないか?紗栄子の知らないような怖いこともあると思うから」 とホッとしたように言う。だけど、その声は大きく屈折して私に届き言葉通りに受け入れられるものではない。 「怖いことって?」 「紗栄子が知らなくてもいいことだ。風呂、入って来いよ。打ち身があるなら湿布を出しておく」 ほら…何かを隠しているでしょ?私が知らなくてもいいことだろうけど、ちゃんと言うべきなんじゃないの? でも事を荒立てたくない私は夫が穏やかなうちに話を切り上げたいと 「ありがとう、お願いね」 そう言ってゆっくりと立ち上がった。こうして普通に一日ずつ無事に終わってくれればいい。 私は夫と義父が入ったあとの湯船のお湯には触れることなくシャワーを浴びる。明日は母のいるホスピスに行く日。夫と義父が、母の入居の援助をしてくれたホスピスへ母に会いに行く日だ。
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