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そこから4時間、ほとんど動かずに眠った紗栄子ともう一度ゆっくりと生活から作り直すつもりで
「今夜、買い物に行く。デートな」
と起きた紗栄子に言う。
「…ぅん?」
「筋肉痛を動かしてみて、明日でもいい。一緒に冬物の用意をする」
まだぼーっとしながらもそっと体を伸ばしてみた紗栄子の肩に、横になった俺は手を置いてゆっくりと撫でる。紗栄子の細い肩を撫でることは、出会った当初から多かったのではないかと思う。
細い肩を感じて守りたくなる。時折震えるような気がして、大丈夫だと伝えたくなる。そして俺も何故だか落ち着く行為だ。
「一緒にスーパーにも行ってみるか…何年ぶりだ…」
「…そうなの?」
「本家にいた時に何人もで買い出しに行ったことはあるが、もう10年ほど行ってねぇか?」
「ひと昔前…だね」
「紗栄子は中学生か…」
「うん…もう母と二人だったね、その時には」
肩を撫でた先の手をキュッと握ると
「今が一番賑やか…たくさんの人とご飯を食べる日常なんてなかったから。それがね、すごく楽しい…ここの生活で一番楽しいことかもしれない」
そう言った紗栄子が自分の腹を擦り、時計を見ようと体を捻って少し痛そうにした。
「お腹減ったかも」
「9時過ぎ。昨日ほとんど食わずに寝たからな」
「運んでくれてありがと、龍之介。このマンションならどこでも安心して眠れるね…ベッドにちゃんと運んでもらえるもの」
「ん。必要なら、眠っていたってシャワーもしてやる」
「…うん…龍之介…スッゴク…グリッ…って当たってるけど…ってか…枠外にはみ出ておられるみたいだけど…ごめん…今日は無理っぽい…手でする?…しようか…?」
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