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「え、このトーストは誰レシピ?新しい…珈琲と合うかは別にして、美味しい」
「オレ。桜えびとチーズのトーストで、ワサビマヨネーズが決め手」
味は…普通のトーストでいいんじゃないかと思うが、空雅も賑やかな食事にしようと思ったのだろう。
「これって、薄いトーストで作って切ればおつまみになる味なんじゃないのかな?」
「紗栄子が作ってくれたら旨いつまみだな」
「サンドイッチ用の食パン買って、焼いて作ってみようかな」
「ん」
頭をポンポンとすると紗栄子の視線だけが俺を捉える。
昨日のような事件、俺たちの突入、組員の怒声、見知らぬ組長と対面、数えきれない数のいかつい車の列…どれもが一般人なら経験しないことだが、藤堂の俺たちには初めてではない。
その俺たちと、紗栄子はこうして食事を共にし、次の予定を思い描き、一緒に生活していこうとしているのだと感じると愛しさを感じると同時に、大切な者をこちらへ引き込むことの責任と生涯大切にするという想いが自然と湧いてくる。
「うん?私は大丈夫だよ、龍之介」
「ん」
今はそれだけで十分だった。今は少々無理をして笑おうが、紗栄子と俺ならそんなものあっという間に過去に出来るという自信がある。
動けるという紗栄子と今夜買い物に行く。多少強引にでも前へ進むべき時だと、紗栄子の透明な眼差しを見て感じるからな。
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