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「これは…1時間でどれだけ買えるかチャレンジみたいな…こと?」
19時過ぎに到着した百貨店でまずリビングフロアに行くと、キッチンダイニング用品、リビング用品などを見ることにした。自分の物だけを紗栄子が選ぶはずがないのだから。
そして紗栄子が手に取って、いいなぁ、と言ったり思った物をどんどん買うとチャレンジかと言われて自分の頬が緩むのを感じた。
20時の閉店を前に、音楽が館内に流れ始めたからそう思ったのだろう。
「この後、別のフロアでゆっくり買い物出来る」
「…裏技タイム?」
「ん」
前に来た時は同じ時間に来たが、紗栄子がまだスーパーの単価にさえ慣れておらずすぐに帰ったから、閉店後の買い物は知らないわけだ。
「下に行くぞ」
コクコク…紗栄子の言う“裏技タイム”の始まりだ。
「緊張することない。俺の物も一緒に選ぶ」
「そうなの?」
エレベーターで視線が近い紗栄子にチュッ…とキスをすると
「…っ…」
動くエレベーターで紗栄子が慌てて前後左右上下を見渡し、目が回ったのか、ふわっと落ちて来そうになったのを抱えてフロアに降りると、また慌てている。その肩をゆっくりと撫でながらいつも行く店を目指し
「レディースもメンズもある店だ。とりあえずここからな」
「わ、床の素材が違う…」
入口で一旦紗栄子が立ち止まると
「いらっしゃいませ、藤堂様。お待ちしておりました」
いつもの担当、大崎という店長に迎えられた。
「今日はレディースも見せてもらう」
「かしこまりました。ちょうど冬物が出揃っておりますのでごゆっくりご覧下さい」
頭を下げるタイミング、挨拶をするタイミング、それを計るように大崎をじっと見る紗栄子が可愛い。
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