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「選ぶと言っても、紗栄子」
「うん?」
「今のこのカーディガン以上の冬物がないから、このあたり全部買う必要があるんじゃないか?」
「ないのはないね…でも、部屋着なんかはネットのでいいよ」
「ん」
紗栄子の意見も聞きつつ、俺は彼女の頭をポンポンしながら大崎を見る。大崎は小さく頭を下げたあと、さらに後ろに控えるスタッフに何かを指示する。
「これがいいな。どうだ?」
落ち着いた色味のボルドーのワンピース。
「シンプルなニットワンピースで裾の後ろが長く作られております」
「うん、素敵な色だね。大人カラーだ。私はこれかな…」
「どうぞ、ご試着下さいませ」
紗栄子の選んだのは白カーディガンで、今着ているカーディガンを脱いでその場で試着する。
「全てボタンを止めていただくとセーターとしてもお使いいただけるネックラインです」
「それとこれ、もらう」
「ありがとうございます。藤堂樣が黒をお召しになるので、ボルドーとホワイトはどちらも黒に合うお色ですね」
カーディガンとワンピースを手にした大崎の言葉に紗栄子が僅かに照れた。そこへ
「この大きなチェックストールなんかが、シンプルなこちらのワンピースによく合います。もちろんお選び頂いたカーディガンもホワイトですから合いますよ」
大崎がカシミヤストールを広げたので一緒に購入する。
「合う、バッグも見せてくれ」
「かしこまりました」
ここで少し慌て始めた紗栄子に
「紗栄ちゃん、これとこれボクにどっちが似合うと思う?」
舞生がネクタイを2本見せる。
「えっと…えっと…どっちもいいよね…」
「じゃあ、両方買おうっとっ」
「あっ…いいのかな?」
いいんだよ、紗栄子。この感覚をゆっくりと掴め。
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