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ふたつのバッグと同時にベルトを持って来た大崎が広げたワンピースにベルトを当てる。
「このくらいの細さのブラックベルトでウエストマークして頂くと、ワンピースの雰囲気が少し変わりますし、藤堂樣の黒とのコーディネートの一体感が増します」
「ん、もらう」
「…ワンピースを1枚選ぶと…エンドレス買い物になるんだ…」
紗栄子の呟きに芦田がクスリと肩を揺らす。その後ろに組員が小走りでやって来た。
「若、買い物中にすみません。親父と姐さんの車列がここの駐車場へ到着したと報告が入りました」
「親父?」
「百貨店の担当者も知らなかったようです」
「連絡なしに閉店後に来るってことは俺が来てると分かってんだな、面倒くせぇ」
「ですが若、昨日世話になったので挨拶は必須」
福嶋の言葉に
「私はお礼を伝えればいいのかな?それとも先に帰った方がいいのかな?」
と紗栄子が俺の腕を掴んで見上げる。
「世話になったのは組の話。買い物は途中。このままでいい。姐さんは強烈なパワーの人だが、紗栄子を攻撃することはないからな」
と俺が言い終わると同時に
「「「「「「お疲れ様ですっ」」」」」」
組員が一斉に頭を下げた間を、無地に見えるストライプスーツ姿の親父とふっくらした体を和服で包んだ姐さんがこちらへ来た。
「こんばんは、紗栄子さんだね?」
まず親父が俺ではなく紗栄子に声を掛ける。姐さんもいる今、もうすでに昨日の事件を払拭するインパクトは決定だろう。
「はい、上村紗栄子です。はじめまして…昨日は…ぇ…っと…私が騙されてしまい、たくさんの方にご迷惑を掛けてすみませんでした…私は元気です、ありがとうございました」
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