part 1

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ダッダッダッダッ…階段を降りて来る音に急かされスニーカーを履くと玄関ドアを開ける。 少し一人になりたいだけなのに、邪魔しないで欲しい。私は 「紗栄子っ」 という夫の声に 「散歩っ」 と叫び返して外に出た。 ちゃんと鍵も持っているし帰るのに…私が不満を抱えていることに気づいていているから二人は私が逃げる可能性を考えるんでしょ?それなら日々の態度を改めてよ。 追いかけて来るなら逃げてみようか。焦って反省してくれればいい。本当に逃げることが出来たら…とは思うけれど、現実的には難しいこともある。 私は駅の向こうの繁華街へ、住宅街の裏道をクネクネと進むことにした。 私の育った田舎ではコオロギなどの声が聞こえ始める8月後半の夜だけれど、ここにはそんなものは存在しない。エアコンの室外機の音が、進んでも進んでも聞こえ 「紗栄子っ」 夫の声も聞こえる。 数分前に‘夜にはゴミ箱を空にしろと何度言ったら分かるんだ?ホントいつも抜けてるよな’と言われて‘必要だと思えないもの’と言い返しつつ家中のゴミ箱を空にした。何度もやっているやり取りだ。 モラハラ夫はご機嫌取りをすることもある。今は焦った声で追いかけているからそっちの気分なのだろう。
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