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「伊坂は藤堂組員、私たちの息子同然だ。こちらこそ申し訳ないことをした」
親父の言葉に姐さんも揃って頭を下げたので、紗栄子が慌てて同じように頭を下げる。
「その手首の赤いのも昨日かい?」
「ぁ、そうですけど…大丈夫です。ちょっとテープとかで赤くなりやすいだけかな…」
カーディガンを脱いで半袖ニット姿の紗栄子が体の前に揃えた手を姐さんが持ち上げ
「ああ、擦ってるね。暴れたのかい?」
と紗栄子に続けて聞く。
「はい、一応は…」
「あとはどんな感じだったか言えることがある?」
「…ちょっと泣きそうになったのは一瞬で…」
「泣かなかった?負けた気がするからねぇ」
「ぁ…」
戸惑った紗栄子の肩を撫で
「好きに言っていいぞ」
と俺が言うと
「あの…泣いたら…鼻が出るので…ちょっと鼻の奥の気配でヤバッて思って…息が出来なくなって死ぬから…」
紗栄子が申し訳なさそうに姐さんと親父を順番に見た。
「サエコ、えらいね。気に入ったわ。本当に怖い思いをさせてごめんなさいね。お詫びに今日はドーンと買い物は任せなさい」
「どれだけ買ってもかまわない。今日は私持ちで、大崎くん頼むよ」
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