part 13

14/14
8084人が本棚に入れています
本棚に追加
/317ページ
どうすればいいのかなと俺を見た紗栄子の隣に舞生が来て 「ボクのも親父持ちでいいですか?」 とネクタイをひらひらと見せる。 「今夜のこの店の分は全てかまわない」 「やったーありがとうございます、親父」 そう頭を下げたあと、舞生が紗栄子にピースして見せている。 「サエコ、もう決めたのかい?」 「はい」 「どれ?」 「あそこの…」 「はぁ?まだ1日分じゃないか…まあいいわ。大崎」 「はい」 「そのワンピースの上に着るコートを秋物と冬物」 「はい、すぐにご用意致します」 「サエコにはお直しが必要そうだね。きっちりと作ってやって」 「かしこまりました」 ここで俺の隣に立ったままの紗栄子が姐さんと大崎を見ながら 「…大崎さんがスピードアップした…」 と呟いたのが親父にウケた。 「ふっ…紗栄子さんは外から客観的に物事を見るんだな」 「ん。だから冷静だが、自分中心で動いて甘えてというのは無理」 「…龍之介…悪口?初対面の人に悪口を告げるのはダメだよ…第一印象って大事らしいよ?」 「サエコ、本家に住むかい?一家に1台って感じの雰囲気だね」 「…一家に1台って…どんな雰囲気?」 姐さんに聞き返せるなら上等だ、紗栄子。ここにいる皆がそう思っているに違いない。
/317ページ

最初のコメントを投稿しよう!