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どうすればいいのかなと俺を見た紗栄子の隣に舞生が来て
「ボクのも親父持ちでいいですか?」
とネクタイをひらひらと見せる。
「今夜のこの店の分は全てかまわない」
「やったーありがとうございます、親父」
そう頭を下げたあと、舞生が紗栄子にピースして見せている。
「サエコ、もう決めたのかい?」
「はい」
「どれ?」
「あそこの…」
「はぁ?まだ1日分じゃないか…まあいいわ。大崎」
「はい」
「そのワンピースの上に着るコートを秋物と冬物」
「はい、すぐにご用意致します」
「サエコにはお直しが必要そうだね。きっちりと作ってやって」
「かしこまりました」
ここで俺の隣に立ったままの紗栄子が姐さんと大崎を見ながら
「…大崎さんがスピードアップした…」
と呟いたのが親父にウケた。
「ふっ…紗栄子さんは外から客観的に物事を見るんだな」
「ん。だから冷静だが、自分中心で動いて甘えてというのは無理」
「…龍之介…悪口?初対面の人に悪口を告げるのはダメだよ…第一印象って大事らしいよ?」
「サエコ、本家に住むかい?一家に1台って感じの雰囲気だね」
「…一家に1台って…どんな雰囲気?」
姐さんに聞き返せるなら上等だ、紗栄子。ここにいる皆がそう思っているに違いない。
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