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だけどそんな事をゆっくりと思ったのは一瞬で
「膝よりも下の長さのロング丈のコートは、重厚感があってフォーマルな印象だけど、着丈が長すぎると野暮ったいからね。サエコにはその膝丈まででいくつか選ぶわ。まずそのブラックは決まりだね、龍之介?」
姐さんはまず龍之介を味方につける。
「ん。襟のない方ももらう」
「かしこまりました」
秒でコートが増えたようだ。
「黒もいいが、その柔らかい白も着せてみたい」
「親父、アイボリーだな。いい。紗栄子、着てみろ」
組長と若コンビに言われてアイボリーカラーのコートを着ると、それもお買い上げ。
「そっちのボアコート、ミドル丈の。それもサエコに着せてやって。カジュアルなものも必要だからね」
「あの…コートってこんなに必要ですか…ね?」
「何言ってんだい、サエコ。まだ4着だよ?こんなんじゃ、装いに合わせてコートが選べないじゃないか」
「は……ぁ……?装い…装いの数をコートが上回るんですけど…」
「えぇぇ?そりゃ大変だねぇ。大崎、サエコの上から下までコーディネート、とりあえず10セット作って見せてちょうだい」
「はい、ただいま」
ダメだ…止まらない。ツンツン…龍之介の袖を引っ張り
「豪華10セットより、マンションの部屋で着る物がいるんだけど…」
とこそっと言った。
「ん、あっち」
龍之介に連れられ違うスペースに移動すると、フードの紐にブランドロゴが入ったパーカーなどがたくさん見やすく並べてある。
「これ全部で足りるか?」
「……」
「ん?」
「…足りすぎ…朝昼晩って衣装チェンジできるよ…」
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