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「若、お楽しみのところ失礼します」
福嶋さんの声がして、私に埋めるようにしていた龍之介の顔が上がった。
「なんだい、今ごろ。昨日の話が終わっちゃいないなら男に任せて、サエコ、買い物するよ」
グイッと引っ張られ…
「ぅおっ…ちょっとパワーを控えめに…」
「ひ弱だねぇ、サエコ」
「じゃなくって、全身痛いんですって…昨日ガムテープ付きで暴れたから」
「姐さん、紗栄子さんの勝ちです」
「あら?サエコは芦田をすっかり手懐けてんのかい?いいじゃないか」
ダメだ…手懐けているのではないけれど…龍之介のお母さんからはずっと斜め上の返答が返ってくる。
「紗栄子、福嶋の預かっていたスマホにまた清水親子からメッセージが入っている。着信もな」
龍之介は私の両肩を撫でながら視線を合わせ
「母親は昨日で終わり。親子は母親の処分について紗栄子にすがりたい旨のメッセージを送ってきてる。だが、こっちも切る。いいな?」
私に確かめてくれた。切れたものだと思っていたのが甘いくらいなんだね。私は福嶋さんが龍之介に見せるために持っていた元私のスマホを見て
「うん。ずっとそのスマホのお世話をしてもらってたんだね…福嶋さん、ありがとうございます」
最初にそう伝えたくなった。
「これも龍之介に任せていいのかな?」
「ん」
「スマホの解約なら私?」
「解約だけで切れねぇ可能性がある。向こうは紗栄子の居場所を知っているからな。だから潰しておく」
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