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皆の視線を浴びているのが分かってちょっと緊張する。
「どうぞ」
「あ、ありがとう…芦田さん」
芦田さんが小さなペットボトルの蓋を開けて手渡してくれたので、その水を一口飲むと、龍之介も私からそれを取ってゴクゴクと飲む。その動く喉仏を見ながら
「昨日のことも…何もかも私だけの問題ではないと分かるから龍之介に任せる。お願いします」
と応えた。
「言っておくが紗栄子のせいでもないし、紗栄子が悪いことはひとつもない。俺が紗栄子を離さないから起こっていることだ。こういう世界に紗栄子を引き込んだのは俺」
龍之介が私の頭をポンポンとすると
「どうやって潰す?」
龍之介のお父さんが龍之介を見ながら私の頭をポンポンと…大きな手が頭の上で渋滞してる。
「こっちで落とします」
「ならいい。これ以上、他所の組に任せてはおけない」
「はい、承知しております」
組長と若の会話は私の頭の上でお互いが手の置き場を譲らないまま進んでいるようだ。動けない…
「その手を退けてやらないと、サエコが縮んじまうよ」
助け舟かと思われた姐さんの発言は…やっぱり少し斜め上のちょっぴり失礼なものだった。が…組長…そういう発言が好きなんだね。目尻のシワがいい感じです。
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