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結局、何をどれだけ買ってもらったのか把握出来ないほどの量の洋服とバッグと靴、タイツや手袋などの小物も藤堂3人が選び、時折私はその輪から離れて深呼吸をしていた。
その時に福嶋さんのお父さんも紹介してもらい少しお話している間に
「サエコは何とかもったね」
「昨日のことが頭から離れない様子なら本家に連れて帰ろうと思って来たんだが」
「ん。俺も昨日より強烈なインパクトを、と今日連れ出してる」
「大人しい顔して強い娘だね、気に入った」
「本来なら龍之介の黒とは交わらない透明な瞳をしてる。大切にしろよ」
「ん、当たり前」
と藤堂親子が話していたとは、誰も知らない。
「…ねぇ…龍之介」
「ん?」
「この大崎さんのお店…明日営業出来る?」
「ん?時間か?」
「ううん…棚も何もかも…スカスカ…」
直後に舞生さんの爆笑と何人かの組員さんの笑い声が聞こえ、何となく皆が笑っている。龍之介だけは普通の顔で私の頭を撫でているので
「龍之介だけには私の心配が伝わった…」
と思わず呟く。
「サエコ、心配なら私と一緒に明日もう一度ここへ来るかい?」
「……っと…それは…」
「なんだい?はっきり言っていいよ」
「お断…」
「どうして?」
龍之介が言ったように姐さんは強烈だが、組長さんがまた目尻にシワを作って姐さんと私を見ている。
「…明日…忙しいと思うから…龍之介がいいって言ったらだけど…元々カフェバーのシフトに夕方入っている日だから…龍之介や芦田さんたちがいいって言ったら行きます」
私がそう言うと、店内が静寂に包まれた…白とオレンジの照明が混在する店内が深い紫色に包まれたような静寂だと思った。
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